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883の記憶  11

リクエストがあったので883と1200の比較や違いを書いて見ましょう。

‘86のエボエンジンとなったスポーツスター。
それまで与えられていら61cin(1000cc)から54cin(883cc)のボアダウンされて発売されました。
この理由は、以前あった高性能モデルとして英車750に対抗するべく、883ccにして
高性能化を狙ったXLCHに習っています。
当時のスペックは55ps/6800、最高速180オーバーで、今で言えばエボビューエルの位置でしょうか。
この伝統的な数値に、新エンジンは戻ったわけです。

そしてコレを更にボアアップして、61cinのショベルスポより強力にしたのが、1100で、88‘には
更にビッグツインと同径ピストンを使い1200までアップされます。
‘88では2減速比が883と同じでしたが、‘89からは更にファイナルが下がり、2次減速比は
小さくなり、強力なトルクに物を言わせて、最高速が上げられました。
まあコレは高回転時の振動対策の側面もあります。

どちらが先かと言えば、883がモデルとして先に発売され、後発でパワーモデルとして1100、1200が
発売されました。
コレによりエボスポーツは、ハーレー史上最強モデルとなります。
実馬力では883で後軸42ps、1200でも53psほど、メーカー発表では883で55ps/6000、
1200で68ps/5500ですが、実際にノーマル車体に乗るとがっかりします。
しかし、吸排気に手を入れ、電装を替えて、エンジン本来の力を引き出してやると、
883で実際に52~55psくらい、1200で72~74psくらいは後軸で出るのであながち嘘ではありません。
アメリカには1cin、1psと言う考え方があるので、正しいことになります。

外見的に双生児と言っていい、この2種類のスポーツスターですが、機能的違いもそれほど多くありません。
大きな違いは、12mm以上違うシリンダーのボア、ピストンとそれぞれ専用のヘッドくらい。
それでもヘッドの構造やバルブ径に大きな違いがあり、この差を金額で埋めようとすると、
883を1200にボアアップするより、1200を最初から買ったほうが安くなります。
つまりパワーモデルは、最初からパワーモデルとして、用意されていたことになります。

出力グラフを見ると、トルクや馬力は同じような分布を示し、単純に数値的な違いに見えますが、
この数値の違いが、実際の走りでは大きく異なります。
883は軽くスルスル走り、その吹け上がりと非力さで、あまり抵抗を感じずにスロットルを開けて
走れるため、日常的なスピード域で、操る楽しさを実感できますし、走りも軽く、コミューターと
しても優れていると思います。

対照的に1200は、強烈なトルクに物を言わせ、低いギア比と相まって、
あっという間にスピードに乗ります。
スロットルを開けることができれば、こんな楽しいバイクはありませんが、
883より1段高いギアで余裕で走ることもできるので、決して単純なパワーモデルではありません。

ただ何事にもやりやすい883と比べると、1200の方が扱いに気を使うかもしれません。
1200エンジンはアクセルのON OFFによるトルク変動も大きく、シフトダウンやエンジンブレーキにも
少々気を使うかもしれません。
ただ圧倒的なパワーは883にはないもので、コレが操れればこんな楽しいことはなく、
また883は下駄のような気軽さと、扱いやすさで、バイクを操る楽しさを教えてくれます。

基本的にオイラの中では、この2種類のスポーツスターは別のものとして存在するので、
あまり比較の対象になっていないのも事実です。
それぞれ長所も短所もありますから、好みによって選べればいいと思います。

コレとは別にもう一つの1200も存在します。
現行のラバーマウントのボアアップキットにはヘッドも含まれますが、
以前のキットはピストンのみで、ヘッドワークは燃焼室の拡大程度でした。
つまりバルブは883のままで、排気量を1200にされたスポーツスターも世の中に存在します。
実際に乗ってみるとノーマル1200に比べトルク型で、883のまま太くなった感じがしますが、
883のようには回りません。
また1200ノーマルのように圧倒的なパワーが一気に出る感じもないのですが、それほどの違いも
感じないでしょう。
ただ気をつけなければいけないのは、このボアアップ1200では、30%排気量が上がっているのに、
バルブによる吸排気量が、30%低いエンジンのままと言うことです。
当然熱的には苦しく、ノーマル1200同様に走るとオーバーヒートやノッキングによるピストン事故の
リスクが高いので、速く走ることより、883+のロードマージンと考えたほうが、故障も少なく
長く乗れるでしょうね。
でも日常的な速度域では、パワフルに走れるので、コレはコレで面白い。
但し上記の理由により、電装変更によるリミットをノーマル以上に上げるべきではないと思います。

そして5年間だけ存在した1200Sもまた異なった理由があります。
バイクと言えどもパブリックな規制には対処しなければなりません。
排気量の小さい883は、この点有利で、長い間大きなスペック変更も受けず、最後までほとんど同じ
仕様のまま生産されました。
しかし1200は、そういう訳にも行かず、度々見直しがされ、ギア比の変更やジェットセットの変更を
受けてきました。
しかし根本解決に至らず、特に排ガス規制的にきつい状態で、1200Sの販売に至ったと考えられます。

ノッキングはシリンダーとピストンの境界で異常燃焼が起こり、爆発に近い燃焼は衝撃波を伴い、
ガスによって作られるピストン表面の境界域を吹き飛ばしてしまうため、ピストン事故が起こりやすくなります。
全く同じ条件なら、ボアが大きいほうが不利になるので、883より1200の方が不利になります。
ましてや1200の方が燃焼力は大きい。
ノッキングを防ぐにはいくつかの方法はありますが、規制上ガスはむやみに濃くできない。
出力の関係で、圧縮比は下げられない。
燃焼効率で、点火進角は遅らせることができない。
そこで1200Sは、燃焼時間を短くすることを選んだんだと思います。
燃焼室の大きさは当然1200の方が大きいので、同じ火点なら、883より1200の方が燃焼時間は
長くなります。
しかしそれでは、熱的に苦しくなるので、燃焼時間を短くしたい、そこで対極にもうひとつ火点を増やし、
燃焼時間を短くしたと言うのがツインプラグの真相でしょう。
これにより燃焼時間を半分にすることで、点火進角は遅らせることができます。
エンジン的な詳しい燃焼の考察は、以前書いた記事に出ていますので参照ください。

‘98に発売されたツインプラグ1200Sは、最初からパワフルに走り、本来のパワーモデルとしては
成功したモデルだと思います。
何よりその登場により、初めて売り上げは883を抜き逆転したまま、現在に至っています。
しかしそれも結果論であって、その真相はこう言う事だったのではないかと考察しましたが、
ラバーマウントになり、燃焼が電気的に制御されている今、より確信を深めています。

このように考えるとやはりスポーツスターと言うバイクは、単純に排気量だけでは語れない違いがあり、
それぞれが特徴をもって存在するので、選択する上では金額でも性能でもなく、ライダーの必要性
だと考えます。
オイラはそれほどパワーを必用としないので、現在まで883で過ごしてきましたが、
結局1200をこれだけ語れてしまうしまうのは、1200への憧れもあったわけです。
もっともそれは‘97にビューエルS1ライトニングに乗り、そのパワーと金額を知った時、
883による1200フルチューン化は諦め(ビューを買ったほうが安い 笑)、
逆に重箱の隅をつつくが如く、883のことを見始めて現在に至るわけです。

まあただのスポーツスター馬鹿ってわけですね(笑。
by jyai883 | 2014-05-26 22:07
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