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たまには違う話4

そういえばこんな本もあります。
戦艦武蔵を書いた吉村昭氏が書いた、「戦史の証言者たち」という本です。
これは著者が小説を書くにあたって、多くの証言者のインタビューを取って歩いた
フィールドノートから実際に会ってしたインタビューを中心に書かれた本です。
この本は著者のいくつかの作品の中に、実際に登場する人物とのインタビューですが、

戦艦武蔵の進水に関わり、世界最大の船台からの進水を可能にした、老技師。
「戦艦武蔵」

海軍甲事件として知られる連合艦隊司令長官 山本五十六の遭難事件において、
護衛にあたっていたゼロ戦パイロットのただ一人の生き残りの方。
「海軍甲事件」

海軍乙事件としての同じく司令長官を引き継いだ古賀峰一遭難で、セブ島において
アメリカ人に指揮されたゲリラに捉われてしまった、連合艦隊参謀長福留中将救出に、
実際に携わった陸軍大隊長。
「海軍乙事件」

この二人の連合艦隊司令長官は、旗艦として同じく戦艦武蔵に座乗し、同じく航空機によって
遭難し、その後2度と連合艦隊司令長官は、武蔵に乗ることなく、また司令部が海上に
出ることもありませんでした。

そして戦時中、昭和19年、瀬戸内海で事故を起こし沈没してしまった潜水艦伊ー33の
事故において水中脱出を試み、生還した二人の乗組員。
そして昭和28年、潜水艦はサルベージされ、それを実現した元海軍工廠技師だった
サルベージ会社社長。
そして潜水艦浮上時にいち早く船内に入り、取材を行った新聞記者。
「総員越シ」(未読)

この当事者しか知りえない事実のインタビューが実際に目に出来たことは、
実際に読んだ小説が、2倍も3倍も深みを増したような気がします。

事実を多くの事を含んで事実であり、実際にオイラが知っている、またはそのような気に
なっているのは、そのほんの一局面に過ぎないと思います。
そのように実際に知りえない部分や局面に光をあて、見せてくれると、また考えは変わって
感じます。

人の歴史の多くは、実は事実のほんの小さな局面を、知っているつもりになっているだけかも
しれません。
そうだったと教えられれば、それ以上疑うこともなく、日本史や世界史の時間に教えられている事を
事実として、認識しています。
しかし本当は、そこに生きた人以外、また生きていた人でもその全体は見えないでしょうから、
事実を知ることは、非常に難しく、また多くの見え方がある事をこれらの本を読んでいて、
思い知らされるのです。
by jyai883 | 2011-02-21 19:11
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