さて帝国海軍は多くの艦長指揮官クラスの方が生き残り、様々な著作やインタビューが
本として残っているのですが、それらを読んでいくとちょっと面白いことに気づきます。 よく日本海軍は旧式な大鑑巨砲主義にあり航空戦力を軽視したために、アメリカに 負けたといいますが、いろんな方のインタビューや著作を読んでいくと、一概には そうとはいえないフシがあります。 確かに航空機は黎明期を経て、ようやく発展期に差し掛かった時期になります。 大東亜戦争が始まった昭和16年当時は正直言って、それほど大きく航空戦力に 期待は無かったのではと思われるのです。 光人社NF文庫に「艦長たちの太平洋戦争」と言う本があります。 この本は生き残った指揮官としての艦長の皆さんのインタビューで構成されていますが、 その中のどなたかの記述に面白いことが書いてありました。 元来軍令部の戦力には航空戦略はなく、戦力的には日本近海における防衛戦略しかなく、 そのため艦隊編成であり、あくまでも艦隊決戦は砲撃戦に重きを置いていたという記述です。 だから航空機を軽視したと言われそうですが、実際は遠洋敵停泊地を強襲し、攻撃占領すると 言うような、侵攻戦略は無かったそうです。 まさに日本海海戦がそうであった様に、国土防衛を主眼にした防衛戦略しかなく、 空母機動部隊などという発想は、当時のどの国の海軍も持っていなかったそうです。 あくまで空母部隊は、戦術的な展開だけで、雌雄を決するのは艦隊による 砲撃戦にあったそうです。 実際戦略として、そのように作戦立案され、それに則って作戦運用されれば、 これほどまでに、大きな負け戦にならなかったのではないかと言うのです。 しかし結果は違いました。 戦術としての航空機および機動部隊の運用を、アメリカは戦略的に展開したため、 元々あった国力の差以上に大きな差が開いてしまったみたいです。 航空機を戦術としてしか考えなった日本とそれを戦略的に考えたアメリカの違いですが、 それに大きく気づかせてしまったのは、日本海軍が実施した、機動部隊による 真珠湾奇襲攻撃であり、それを戦術としてしか考えなかった日本と、大きな軍事的戦略として 気づいてしまったアメリカとの考え方の違いでしょうね。 なぜなら真珠湾の奇襲はあくまでアメリカ太平洋艦隊の殲滅が主眼であり、 空母は取り逃がしたものの、主な攻撃目標は、艦隊主力艦である戦艦郡であり、 そういった意味では大成功であり、作戦とした機動部隊による攻撃はそれ以上でも それ以下でもないということです。 航空優位を論じたとされる当時の山本五十六連合艦隊司令長官でさえ、戦術上としか 考えておらず、あくまで主戦は艦隊決戦にあったのではなかろうかと思わせるフシは、 「真珠湾攻撃総隊長の回想」を書いた淵田美津雄航空参謀によれば、山本司令長官でさえ ボロクソですから、航空機の戦術的使用と戦略的運用では連合艦隊内のコンセンサスに 違いがあり、ひょっとすると砲撃による艦隊決戦が大東亜戦争で主流をなしていたら、 戦後の世界も大きく様変わりしていたかもしれません。 航空母艦による機動部隊の編成がどれくらい先見的で、戦略的な発想だったか、 今のアメリカを見ればよく解ることで、海洋戦略の軍事上の主流が前大戦以来、変化が無いこと が解ります。 それをやりながら気づかなかった日本と、やられて気づいたアメリカの違いが雌雄を 決した最大の理由だったと思います。 この戦略は艦艇形状にも大きな影響を与え、戦艦の意味が機動部隊の航空防衛と 上陸作戦の砲撃支援以外見出せなくなり、機動部隊護衛には防空と対潜攻撃を主任務とする 軽巡洋艦程度の大きさしか必要なくなり、上陸支援も航空支援を有効に使えば問題ないため、 戦艦は意味をなさなくなりました。 では現代の湾岸戦争になぜアメリカが戦艦を復活させたかと言うことになりますが、 上陸支援とミサイルプラットホームとして有効であると考えたからでしょう。 沿岸からの支援砲撃なら、主砲の40cm砲撃はどんな支援射撃より強力有効であり ミサイルのプラットホームとしても広さがあり、多くの搭載が可能で集中運用ができます。 また沿岸部からのミサイル等による反撃に対しても、元々が重装甲の為、現在の艦艇などに 比べても、比較ならない防御が施されていますから、近接支援にはもってこいだったのでしょう。 まあ海軍力を持たないイラクでの話ですから、それ以後再び退役したことを考えると、 有効価値は限定的なものだと考えられます。 現代的電子戦においては、容積はありますから、近代改修をすれば何も問題なく、 アップグレード可能でしょうが、再び退役したことは、そこまでの価値は現代的戦略では 有効性無いことを示していると言えるでしょう。
by jyai883
| 2011-02-19 14:46
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