ノッキングについて書こうと思うといろんな事象があり、更にはネット上では用語の使い方がとっ散らかってたりして様々なのですが、友人のかちかち山事件や1200ボアアップの棚落ちの事象など、なるほどと
思うことも多く、改めて勉強になります。 っがその前にちょっと特殊な1200Sエンジンを考えてみたいと思います。 ‘96に登場したXLH1200S‘は‘98にシリンダーヘッドを一新して登場します。 最高出力こそ既存の1200とは1psの違いしかないものの、乗った感じは全然別物で、S1ライトニングを 乗ったとき以来の衝撃でした。 特に中低速の盛り上がりはノーマル1200の比ではありません。 外見的な相違はツインプラグヘッドで独立点火を採用しています。 諸元的には圧縮比が9・8:1に上がっていたと思いますし、MJもそれまで1200が採用していた#170~175より 格段に大きい#195をつけてセッティングされています。(のちガス検対策#185に落ち、エアクリーナーは 日本向けインターナショナルに変更されます) 一見1200の高性能化のように見えました。 っがノッキングを調べていくうちに当然オクタン価と言うものに突き当たるのですが、オクタン価とはこのノッキングに対する耐性の指標なのですが、要はどんだけノッキングし難いかってことになります。 つまりハイオクガソリンは耐ノック性が高いガソリンですが、燃え難いわけではありません。 同じようにメカニカルオクタン価ってのもありまして、こいつはハード面つまりエンジンサイドに与えられた 耐ノック性のことで、それには当然条件があります。 1、適切な冷却(ヒートスポット防止含む) 2、渦流やスキッシュによる燃焼促進(燃焼速度) 3、火炎伝播距離の縮小(ツインプラグ含む) 4、燃焼室形状(エンドガスが残りにくい形状) この条件は近藤さんのブログのノッキングの項目から取ってきましたが, http://blog.goo.ne.jp/nextblog/e/03ce9cb69058062862970dfe9d7f2789 コレがまさに1200Sにピッタンコなのです。 更に条件に追加すれば、進角を遅らせると言う条件もありますが、確か1200Sのフルアドバンスは15° ほどと記憶していますから、従来の30°~40°まで進角する1200に比べても、まさにその通りです。 1~4の条件を1200Sに当てはめると、 1はガスを多目に出す。(カムハイトも1mm高いと聞いていますが、排気量からすれば薄いと感じます) 2はスキッシュエリアの設置と燃焼室の縮小で結果的に圧縮比が上がっている。(4にも重複します) 3はまさにツインプラグで燃焼時間を短縮している。 4はエボになってからフラットトップピストンになり燃焼室はより狭く、燃焼域が均一になっています。 そうこのエンジンは吸い込んだガスをギリギリ燃焼域を小さくし、火点を増やして点火して燃焼時間を短くし、 ノッキングを防ぐことによって燃焼効率が上がり、結果出力的にも向上していると言えると思います。 つまり出力向上を狙っているのではなく、燃焼効率の上昇を狙ったエンジンともいえ、 その目的は排ガスのクリーン化と言えるでしょう。 1200Sのエンジンは実際に乗ると、中低速は元気ですが上では回りづらく感じます。 上記の条件は結果的には高回転向きではないことが分かります。 それでも排気などで抜いて更に上を目指すと条件が変わってしまうので、また違ったトラブルの元になると 思います。 ではノーマルから排気効率の高いマフラーに換えたらどうなるか?です。 恐らく中低速では少し元気になるくらいでさほど問題にはならないと思いますが、高回転域では 残留ガスが減りシリンダー内は常にフレッシュなガスが供給されやすくなると思います。 これは一見良さそうに思うのですが、フレッシュなガスはきれいに燃えすぎてしまうので、燃焼室を より高温高圧にさらします。 つまり燃焼効率を上げようとしたことが余計に作用してしまうと思います。 コレが繰り返されればタダでさえ熱量の多い高回転時では、オーバーヒートの様相を呈してくるでしょう。 実際ノッキングは小さいものは常に起こりうると考えますが、オーバーヒート状態では更に起こりやすくなり、 高温にさらされる排気バルブ側や堆積カーボンは常に火点になりやすいですから、 このような状態で所謂強ノックと呼ばれる異常燃焼が起こりやすくなります。 この異常燃焼ははるかに爆発に近く、ノッキングはシリンダー境界部分、簡単に言ってしまえばピストン 外周部で起こりやすいので、外周部が溶けて所謂棚落ちの状態に至ってしまうと考えます。 1200ボアアップでもそうですが、特に温度の高い排気バルブ側で起こることがほとんどで、 ひどいのになると排気ポート内までまるでプラグのようにきれいに焼けていることがあります。 友人の1200Sはまさにこの状態で、全開走行状態でアッと言う間に白煙を上げました。 このように1200Sのエンジンはある限定的条件のあるエンジンではないかとオイラは考えます。 しかしこれはノーマルで極端に排気が抜け、かつ連続した全開走行での話しなので、諸条件を変えてしまえば、問題なく元気に走ることができます。 883より大きなボアで、ビッグツインより高出力なエンジンで環境問題に対して行かなければ ならない条件下では、厳しい選択だったと思います。 ラバーマウントエンジンで1200Sが消えた理由はおそらく、この問題がエンジン的にも電気的にも 改善されたからではないかと思います。 生産5年間で消えたのは4速エンジンと同じですが、常に技術的フィードバックをエンジンにもたらす ハーレーならではな車体だったと思います。
by jyai883
| 2010-06-04 10:34
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